「ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか 」を読んだ

ナチスドイツ、ファシズムは単純に社会主義でも全体主義でもなく、当時の世界とドイツの状況が複雑に絡み合って発生したという事がこの一冊でよく理解出来る。(ナチはあくまでも軍事力を強化するために様々な経済政策をしているし、後に社会主義が資本主義に比べてそもそもの性質上軍事力を強化する予算を獲得できないと言うのは歴史が証明している部分でもある。)そして2020年、現在進行形で高まり続けるポピュリズムとの関連性を見ると、この状況がどれほどまでに乗り越える事が困難な壁なのか、そもそも乗り越えるという事自体が不可能なのかと考えさせられる。

アメリカンドリームの幻想は破られ、貯蓄に貯蓄を重ねても安心は保証されず、戦争はデジタル化され、そして無限とも言える大量の情報を秒単位で浴び続けながら生きていくこと自体の困難さをふと感じた。

2~3時間で読めるのでおすすめ。

彼は愚かではなかった。完全な無思想性―――これは愚かさとは決して同じではない―――、それが彼をあの時代の最大の犯罪者の一人にした素因だったのだ。このことが〈陳腐〉であり、それのみか滑稽であるとしても、またいかに努力してもアイヒマンから悪魔的な底の知れなさを引き出すことは不可能だとしても、これは決してありふれたことではない。

エルサレムのアイヒマン──悪の陳腐さについての報告